今回は「教育資金の贈与非課税制度の仕組み」というテーマでお話します。
子育て世代にとって教育費は大きな負担ですが、その負担を軽減する方法が
あります。それは子どもの祖父母、つまり子育て世代の親の資産を上手に
活用して教育費の負担を軽くし、しかも相続税の節約にもなるという
画期的な方法です。それが「教育資金の一括贈与非課税制度」です。
教育資金の一括贈与非課税制度とは
教育資金の一括贈与非課税制度は、高齢者の金融資産を子育て世代に移して
教育費の負担を軽くする目的で、2013年4月に導入された期限付きの
制度です。当初は2015年12月までの約3年間の予定でしたが、
2021年3月まで延長されることになりました。
30歳未満の孫や子どもに1人あたり1500万円まで一括して教育資金を
贈与しても、贈与税はかかりません。
この制度が導入される以前は、教育費などの必要額をその都度負担すれば、
贈与税は課税されませんでした。しかし前もってまとまった資金を渡すような
場合は贈与税の対象とみなされました。これに対して今回のこの制度は、
まとまった資金を非課税で贈与できる利点があります。
次にこの教育資金の一括贈与非課税制度を使う際のフローをご覧ください。
まず金融機関で、非課税制度専用の口座を孫や子どもの名義で開設します。
そのうえで贈与する資金を入金します。大学進学時など、教育費を払う必要が
生じたら、そのときに口座から引き出して使います。そして使い道が教育費で
あることを証明する領収書などを金融機関に提出します。
専用口座は銀行や信託銀行、信用金庫などで扱うところが多く、税務署との
書類のやりとりは原則として金融機関がしてくれます。
専用口座を持てるのは、孫や子ども1人につき1つの金融機関に限られます。
制度を使えるケースは意外に多く、贈与する相手である孫や子どもは、30歳に
なるまで非課税制度の対象になります。このため例えば大学卒業後に大学院に
通っている場合も含まれます。
教育資金の贈与非課税制度の対象となる項目
次に教育資金の贈与非課税制度の対象となる項目を説明します。
対象外となって課税されることもありますので十分にご注意願います。
教育資金は2種類に分けられ、そのうちのひとつは学校などに直接払う費用です。
対象は保育所、幼稚園、小中学校、高校、大学、大学院、専修学校などです。
費目としては、入学金、授業料、入学試験の検定料、修学旅行費、給食費、
学用品、保育料などが含まれます。
もうひとつは教育関連サービスに払う費用です。
学習塾や予備校のほか習い事や社会通念上妥当と思われるものであれば
認められます。例えば水泳やピアノ、絵画などの教室です。ただし教育関連
サービスについては教育資金として認められるのは500万円までで、
2種類の教育資金を合算すると1500万円が非課税枠となります。
教育資金贈与信託の受託状況
ではここで2013年4月から始まった「教育資金贈与非課税制度」の受託状況
の推移を見てみたいと思います。
信託協会によるとこの制度を活用した教育資金贈与信託の受託状況は
2014年12月末で契約は約10万件で、契約額は6973億円を
突破しました。この数字は当初の見込みを大きく上回っています。
この人気の秘密は祖父母や親の子や孫への教育への思い入れが強いこと
だと思います。とはいえ、住宅資金、老後資金と並んで人生の三大資金
ともいわれる教育資金の負担は決して小さなものではありません。
信託協会が制度の利用者を対象に行なったアンケート調査では、教育資金
にかかる家計負担が軽減されたと回答した人が9割を超えています。この
教育資金贈与非課税制度は教育費金をしっかり確保するだけでなく、子や
孫の教育を考える機会が増えたという点でも大きな効果があったようです。
さらに教育資金贈与の非課税制度には祖父母の世代である高齢層に滞留
しがちな金融資産を若年層に移すという目的もあります。