今回はマイホームの資金計画で『頭金ゼロの場合の恐怖の落とし穴』と
いうテーマでお話しします。
最近、頭金をあまり用意せずほぼ全額を住宅ローンで賄う人がいます。
以前は、頭金は購入価格の2割以上が常識でした。
頭金について少しお話をしますと、「今ある貯蓄額が頭金に回せる金額」と
勘違いする人が少なくありません。マイホームを購入するには、登記費用や
火災保険料、印紙税や登録免許税など様々な諸費用がかかります。
土地と建物を取得した場合の諸費用はその取得費用の7%が目安です。
3,500万円で取得すると約250万円の諸費用が必要です。
仮に500万円の貯蓄があっても、諸費用が250万円かかるのですから
頭金として使えるのはその半分の250万円です。
頭金ゼロで資金計画をした場合の落とし穴
頭金ゼロで資金計画をした場合の落とし穴が2つあります。
1つは、もし収入が減ったり失業によって返済することが困難となって家を
売却しようとしたときの落とし穴です。
頭金をゼロで購入しているとローンの残債が建物の時価を上回る状態、
つまり「逆ざや物件」となって売っても損する状態になったり売りたくても
売れない状態になります。どういうことかというと、購入した物件の購入
価格には建物の価値以外に販売会社のプレミアム、つまり広告費用などの
販売経費などが上乗せ価格として含まれています。だから新築の家をすぐに
売りに出すと損がでます。
2つ目の落とし穴は、頭金がゼロの場合、総返済額が増えて損するということです。
たとえば、頭金ゼロで4,000万円の物件を買う場合35年返済で金利3%の
ローンを組むと毎月の返済額は約15万円。年間の返済額は185万円で
35年間の総返済額は6,465万円となります。
それに対して、頭金を2割の800万円を用意して借り入れ額を3,200万円
に減らせば、毎月返済額は12万円台になります。
35年間の総返済額も5,172万円で頭金ゼロの場合に比べると総返済額は
1,293万円も少なくなります。
頭金として支払った800万円を差引いても493万円も少なくなり、頭金
を4割の1,600万円用意すると総返済額は986万円も少なくなります。
この計算でもおわかりのようにやはり頭金を多くするほうが得策です。
いかがでしたか、頭金を多くする方がトクだということが
おわかりいただけたと思います。
頭金を用意した場合の住宅ローンの動き
次に頭金がゼロの場合と頭金を2割用意して住宅ローンを組んだ場合で、
住宅ローンの残債がどのように減っていくかを説明したいと思います。
ここで注目していただきたいのは、住宅ローン残高の減り具合と新築住宅の
価格が購入後どのようなペースで下落するかということです。
図の中央、住宅時価を示す赤色のラインをご覧ください。
一般の住宅価格は購入直後に大幅に目減りし、2~3年たてば新築時の80%、
そして10年経てば60%くらいの価値しかなくなってしまいます。
次にローン残高を比べてみましょう。
頭金ゼロの場合
まず頭金ゼロの場合の青色のラインをご覧下さい。住宅の時価が20年以上に
わたり、ローン残高を下回り続けます。ということは、この間に家を売却
したとしてもローンを完済することはできません。そうなると不足額を用意
して返さない限り身動きが取れなくなり最悪、自己破産などに追い込まれる
危険性があります。
頭金を2割用意した場合
これに対して頭金2割の場合の緑色のラインをご覧下さい。このラインは
比較的余裕があります。ほとんどの期間で住宅の時価がローン残高を
上回っているからです。途中で自宅を手放さざるをえなくなったときでも、
ローンを完済できる可能性は高くなります。
いかがでしたか。頭金ゼロの場合の落とし穴。頭金ゼロでの住宅ローンが
普及して10年くらいですが、返済が滞って破綻するということは人ごと
ではありません。家づくりを実現するには、頭金を2割程度用意してローン
を組めば家計が苦しくなるリスクは小さくなります。