今回は「空き家を民泊に活用するには」というテーマについてお話しします。
今、注目されている「民泊」
空き家問題の新たな解決策の一つとして、「空き家を民泊に活用する」という
方法が注目されています。
通称「民泊」とは増え続ける訪日外国人向けの簡易な宿泊施設という位置付けです。
観光地に近い地域やホテルなどの少ないエリアで空き家を所有している人にとって
は検討する価値があると思われます。賃貸住宅として貸し出す以上の収益を見込む
ことも、工夫次第では不可能ではありません。
民泊は賃借人が長期にわたり住み続けるわけではないので、必要ならば自分自身で
住むことも売却することもできて、空き家を積極的に運用したい人にはおすすめの
選択肢です。
民泊新法について
では空き家を民泊に活用する法律について説明をします。
2017年6月の国会で一般住宅に有料で旅行者などを泊める「民泊」の基本ルールを
定めた法律いわゆる「民泊新法」正式名称は「住宅宿泊事業法」が成立し2018年
6月に施行されました。
従来はホテルや旅館を営業できなかった住宅地でも都道府県などへの届け出を
条件として年間180日までは宿泊サービスの提供が可能になりました。
また民泊を営む宿泊業者や物件の管理を請け負う管理業者そして予約サイトの
運営などを行なう仲介業者の責務が明記され違反した場合の罰則も定めています。
ただ、住環境悪化などの不安から独自に条例を定め営業できる期間や地域を
より厳しく規制している自治体もあります。住宅宿泊事業者の届け出数は
2018年8月末時点で8,272件にとどまっています。
政府は民泊新法で新たな宿泊形態を整え2020年東京五輪の開催時に予想される
宿泊施設の不足を解消したり、日本を訪れる外国人の受け入れ増加を見込んで
います。2017年に日本を訪れた外国人の数は前年比19.3%増の2,869万人で、
統計開始以来の最高記録を更新しました。
一方、日本人の海外旅行者数は前年比4.5%増の1,788万人で2015年の時点で
45年ぶりに逆転した訪日外国人と日本人海外旅行者の幅はさらに拡大しました。
民泊を営むには?
では民泊を営む3つの方法を説明します。
民泊を営むには、①民泊新法 ②旅館業法上の簡易宿所 ③国家戦略特区という
3つの方法があります。これらは日数制限・最低床面積・フロントの有無・
実施地域・住居専用地域での営業の可否などで違いがあります。
これまでは一般住宅に宿泊客を泊めるには②の旅館業法上の簡易宿所として
許可を得るか、③の国家戦略特区に指定された地域で地元自治体の首長から
認定を得る必要がありました。
そこに①の民泊新法が加わったため今後は都道府県や政令指定都市、東京23区
などに届け出れば都市計画で住居専用とされている地域でも営業可能となります。
ちなみに「民泊」と言葉がよく似た「民宿」は「一般の民家が『旅館業法上の
簡易宿所』の許可を得て営む宿泊施設」という位置付けになります。
民泊の場合は家主は届け出番号などを記した標識を外から見やすい場所に掲げる
ことや、宿泊者名簿の作成、外国人宿泊客への生活ルールの説明などが義務づけ
られます。家主が居住しない民泊物件は国に登録した業者に管理を委託する必要
があります。
民泊を規制する自治体の実態
民泊に関する独自の条例をつくれるのは、保健所を設置している全国150の
自治体ですが、その3分の1以上がすでに何らかの規制を設けています。
例えば、東京都目黒区は平日の民泊を全域で禁止しています。
京都市は、住居専用地域での営業を原則として観光の閑散期の1月と2月の
2か月間に限定しています。
無届けでの民泊営業は違法となるため、政府は宿泊予約の仲介サイトを
運営する業者に対して、違法物件を掲載しないよう要請し、自治体も
取り締まりを強化しています。
民泊新法の届出件数が伸びない理由は?
このように、数多くの規制や手続きの煩雑さなどから届け出件数が低迷している
民泊新法ですが、届け出件数が伸びない理由として考えられるのは、
①最大でも年に180日間(つまり稼働率50%)の営業では利益が見込めないこと。
②各自治体が条例でさらに厳しく営業日数や営業可能エリアを限定していること。
③消防設備の設置などに追加コストがかかること、などが挙げられます。
民泊新法は日本における「シェア経済」の推進役とされています。
シェア経済とは個人が持っている資産や、時間、スキルなどを個人間で
貸し借りする経済活動のことです。