今回は「地震で空き家が倒壊する前に」というテーマについて話をしたいと思います。
日本全国で多発する地震
日本は地震列島といわれる通り、全国各地で地震が多発しています。
「もしも自分の所有する空き家やブロック塀などが地震で倒壊し、近隣に
迷惑をかける事態になったら」と想像するだけでも恐怖がつのります。
記憶に新しいところでは、2016年4月に発生した熊本地震。
その時に全壊の判定を受けた家屋が、1年後の2017年5月に倒壊し、
約3m幅の市道をふさいだため、熊本市は道路を通行止めにしました。
この家屋は5月末に公費で解体される予定でした。地震で被災し、解体を
待つ空き家は各地に存在すると思われますが、倒壊して近隣に迷惑を
かけないよう注意が必要です。
熊本市で行われた空き家の実態調査
熊本市は、熊本地震後に、倒壊の恐れがある空き家の通報が相次いだこと
などを踏まえ、2018年7月に初の実態調査を開始しました。
危険な状態にある空き家を把握するのが目的です。
熊本市によると、「屋根瓦が落ちそう」「樹木が茂って困っている」など、
空き家に関する相談や苦情は2003年度以降、約1100件が寄せられ、そのうち
熊本地震以降の相談が600件を占めるとのことでした。
実態調査の対象は、熊本市が水道の利用状況などから割り出した「空き家の
可能性がある建物」2万から3万戸です。現地調査は市内の測量調査会社に
委託しており、空き家の敷地外から目視で、「空き家かどうか」「近隣への
悪影響を及ぼしてないか」「老朽化により危険な状態になっていないか」など
を確認します。実態調査の結果は「熊本市空き家等対策計画」に反映されます。
大阪北部地震と空き家対策を巡る課題
次に、2018年6月に大阪府で震度6弱を観測した大阪北部地震は、空き家対策
を巡る都市部の課題を浮き彫りにしました。JR高槻駅から徒歩約15分の
住宅街にある平屋家屋の引き戸には、高槻市が応急危険度判定で「危険」と
判断したことを示す赤い紙が張られていますが、隣の家の男性は「10年以上
は空き家のはず。壁や瓦が落ちて自分の家や歩行者にぶつかるかもしれず
恐ろしい」と表情を曇らせます。
大阪府北部は地方に比べて住宅の密集度が高く、余震の二次被害を恐れる住民
からの相談が相次いでいますが、空き家所有者の特定は容易ではありません。
高槻市には地震発生から1週間の間に、空き家の危険性に関する相談が65件
ありました。昨年度に作られた空き家リストなどを基に所有者に連絡すると、
「遠くに住んでいる」「高齢で頼れる人がいない」「費用を工面できない」
などの理由で対応を拒む所有者もいるそうです。
大阪府北部地震で多くの家屋が被害にあった京都府八幡市でも、空き家の被害に
関する近隣住民からの問い合わせが市役所に相次いでいます。
「空き家の瓦が落ちてくる」など二次被害を訴えたり、危惧したりする相談が
約30件あり、八幡市は対応に追われています。
老朽化した空き家は災害時に倒壊や延焼の恐れがあり、被害拡大を招きかねません。
空き家対策特別措置法
空き家については、2015年に「空き家対策特別措置法」が施行されました。
適切に管理されず、倒壊の恐れや衛生上の問題などがある建物を市区町村が
「特定空き家」に認定し、修繕や撤去を所有者に指導・勧告する制度です。
命令に従わない場合「代執行」で強制的に解体でき、その費用は建物所有者
や相続人に請求されます。所有者不明の空き家については、命令などの手順を
踏まない「略式代執行」で解体できる、とも定めています。
空き家の管理は本来、空き家所有者の責任です。代執行が行われるのは、
緊急性が高い場合のみで、その費用は所有者に請求されます。もし、その
支払いを拒めば自宅などが差押えられてしまいます。「放置しておけば
行政が勝手に対処してくれる」と考えるのは大きな間違いです。