今回は「空き家対策のランドバンクとは」というテーマについてお話しします。
「ランドバンク」とは
皆さんは「ランドバンク」をご存知でしょうか。
ランドバンクとはアメリカで州法などに基づいて設立された機関のことを
いいます。その機関は市場が見捨てた物件、つまり空き家・空き地、
そして放棄された土地や税金を滞納して差し押さえした物件に特化して、
地域を一体的に活用し再生する事業を行っています。
都市のスポンジ化
日本では全国で空き家や空き地が増え、その結果、都市の「スポンジ化」が
進んでいます。スポンジ化とは、都市の大きさは変わらないにもかかわらず
人口が減少し都市内に使われない空間が、小さい穴が開くように生じて密度が
下がっていくことをいいます。
実際、人口の減少にあわせてコンパクトな街にしようと計画しても、市街地の
スポンジ化が止まらなければ街ににぎわいは生まれません。
その対策として今、注目されているのが空き家や空き地などを一体で再編する
日本版の「ランドバンク」事業です。
鶴岡市のランドバンク事業
2017年12月18日の日本経済新聞に「空き家・空き地丸ごと再生」
として山形県鶴岡市のランドバンク事業が取り上げられていました。
ではその取り組みを探ってみたいと思います。
山形県内第二の都市である人口約13万人の鶴岡市は今、大きな課題を
抱えています。それは空き家が増え、中心部の空洞化が進んでいることです。
鶴岡市の中心部は、居住者が高齢化し老朽家屋も目立っていて鶴岡市全体の
空き家は約2800棟と毎年100棟程度増えています。
そこで鶴岡市は「空洞化を防ぎ、人口密度を保たないと都市機能を維持できない」
と2017年4月にコンパクトな街を目指す立地適正化計画を策定しました。
日本版のランドバンク事業
計画策定に先だって始めたのが日本版のランドバンク事業です。
その内容は空き家や空き地、幅の狭い道路を一体で再編し、良好な宅地を
生み出す試みです。その事業を担うのは宅建業者や建設会社、司法書士
などの専門家で設けたNPO法人「つるおかランド・バンク」です。
「行政も民間も手をつけられなかった問題物件」を対象に有効活用に
つなげるのがNPOの仕事だと位置づけています。
鶴岡市の試みは全国で注目されていますが、ランドバンクの本家である
アメリカの仕組みとはかなり異なるようです。アメリカでは州法などに
基づく公的な機関が空き家や空き地、税滞納物件などを取得し、権利関係
を整理したうえで解体したり、再利用につなげたりします。
日本でランドバンクを成功させるには
鶴岡市のランドバンク事業の内容について、おわかりいただけたと思います。
このランドバンクについては政府も制度を創設する方向で検討に入っています。
日本で空き家や空き地を再生するには所有権の問題まで踏み込む必要があります。
そして日本でランドバンクを成功させるには国の支援やさまざまな規制や基準の
緩和が必要となります。