今回は「大雨や大雪で空き家が倒壊する前に」というテーマでお話しします。
集中豪雨による空き家の倒壊
最近は集中豪雨が多発しています。集中豪雨は発達した積乱雲がもたらすといわれて
います。それがどういう現象かというと、地面付近の暖かく湿った空気が上昇すると
上空の冷たい空気とぶつかり大気の状態が不安定になります。そして積乱雲が発生します。
この積乱雲が豪雨の原因であることは周知の事実ですが、日本の周辺では積乱雲が発生
するメカニズムが出来上がっているため集中豪雨が多く発生するようです。
大雨による空き家の倒壊・被害状況
最近は大雨による空き家の倒壊も相次いでいます。ではその被害状況を見てみます。
兵庫県南あわじ市では2018年6月29日の大雨で空き家が1軒倒壊しました。
この日は気象庁の南淡観測地点で1時間に50.5ミリの雨量を記録。南あわじ市の
空き家は午後7時すぎに倒壊し、近隣の住宅への進入路をふさぎました。
近くの男性によると「数十年前から空き家で、所有者は淡路島の外に住んでいる。
夜だったから良かったが、昼間だったら下敷きになっていたかもしれない」といいます。
続いて南あわじ市では、7月5日から8日まで降り続いた大雨でも別の空き家の納屋が
倒壊し、土壁の一部が横の道路に落下し散乱しました。そのため、南あわじ市では
コーン標識を置いて通行止めにしました。近所の住民によると10年以上前から
空き家になっていたと見られます。この道路は小学生の通学路にもなっていて
近所の女性は「地震だけでなく、雨でもつぶれるとは」と驚いています。
いずれも怪我人がなかったのが不幸中の幸いですが、歩行者がいれば惨事に
なっていた恐れもあります。
南あわじ市は2017年に空き家の実態調査を実施しました。
水道の使用状況から2千軒以上の建物を現地で調べ、所有者への意向調査も実施
しました。その結果、市内に889軒の空き家を確認し、そのうち、倒壊すれば通行人
などに影響が及ぶ恐れがある空き家は76軒でした。
先ほど紹介した1件目の倒壊した空き家は、市が調査した889軒に入っていましたが
納屋の一部が道路に落下した空き家は市の調査から漏れており、空き家の実態を把握
することの難しさが浮かび上がっています。
大雪の影響による空き家倒壊の被害
次に、大雪の影響により空き家が屋根に積もった雪の重みで倒壊する被害も
雪国で相次いでいます。その状況について説明します。
2018年2月に岩手県西和賀町の木造2階建の空き家が積雪により倒壊しました。
盛岡地方気象台によると、この地域の積雪は2m47㎝にも達していたとのことです。
怪我人はありませんが一時は、がれきが県道の片側をふさぎました。この空き家の
相続人は県外に居住中とのことで、自治体は対応に苦慮しています。
屋根に積もる雪の重さ
次は屋根に降り積もる雪の重さについて説明します。降ったばかりの新雪では
1立方メートルあたり50㎏から150㎏ですが、時間が経つにつれて「しまり雪」
から「ざらめ雪」へと変化し、重量が増していきます。したがって雪下ろしをせずに
放置された空き家は、積雪により倒壊する可能性が高くなるので注意が必要です。
次は、富山県の情報ですが、大雪に何度も襲われた2018年2月は、空き家の倒壊や
破損の被害が続出しました。南砺市では空き家の一部がつぶれ、がれきが道路に
散乱しました。近隣住民によるとこの空き家は昔、織物工場の事務所や寮として
使われていましたが、所有する会社が数十年前に倒産して以降、手つかずになって
おり、所有者も不明とのことです。
高岡市の担当者は「空き家は市の全域で増えており、全体数を把握するのが
難しい。実態をつかめなければ対策も立てにくい」と漏らしています。
倒壊だけではない空き家の問題
空き家の問題は倒壊だけではありません。
2018年1月末の大雪では富山県氷見市の北部で水道の障害が続出しました。
空き家での漏水が被害拡大に影響した可能性があります。
富山県では「適切に管理されていない空き家は老朽化が進み、倒壊などで周囲の
住民への悪影響や怪我人が出る恐れがある」として、「空き家バンクを利用したり、
自治体の補助制度などを使って解体するなどしてほしい」と呼び掛けています。