今回は「無垢の木の柱」についてお話します。
特別な思いが込められた「柱」
人々は昔から「木の柱」に特別な思いを寄せてきました。
まずはじめに、柱が立ち並んだ「列柱」のお話です。
画像は奈良の唐招提寺の金堂に立つ列柱です。8世紀後半に建てられ、
直径二尺・約60センチの丸い桧の柱が8本並んでいます。
柱の中央部分にわずかな膨らみのある「エンタシス」の列柱です。
エンタシスといえば、教科書にも出てくるギリシャのパルテノン神殿。
紀元前400年代に建てられました。日本建築とは異なり大理石の柱ですが
正面に8本の円柱が並んでいます。古代ギリシャの文化がシルクロードを
経由して、日本に届けられたことがわかります。
次の画像は福島県喜多方市の新宮熊野神社の「長床」。
平安末期に建てられた芧葺き寄棟造りを復元したものです。直径一尺五寸、
約45センチの丸い柱が等間隔に並び、まわりに壁のない壮大な建物です。
柱がすっくと立つ姿は、樹木が天に向かって立つ姿と同様に、神々しいものです。
柱も樹木も共に、その昔は神の降臨を仰ぐ「よりしろ」とされていました。
頼もしい「大黒柱」のある家
柱といえば大黒柱。民家には昔から「大黒柱」がありました。
大黒柱とは、土間と座敷の境目の中央に立つ太い柱のことです。
次の画像の建物は大阪府富田林市にある旧家の「杉山家」住宅。
江戸時代中期頃の建造である重要文化財です。中に入ると、どっしりとした
太い大黒柱が建物を支えています。黒く光る柱は長い歴史を感じさせます。
なぜ「大黒柱」というかといえば、この柱は台所にも近く、一家の
繁栄をつかさどる「大黒天」をまつったためと思われます。
大黒柱は家のなかで中心となる柱。そこから転じて、家族を支えて
中心となる人のことも「大黒柱」と指すようになりました。
画像は、大黒柱を現代にアレンジした「自然素材の家」です。
土間と床上の間に、七寸角、約21センチの桧の大黒柱が存在感を見せています。
頼もしい大黒柱は、なぜか安心感を与えてくれます。
背割り
この大黒柱の裏側には「背割り」が入っています。
背割りとは、乾燥に伴って、柱に割れが生じるのを防ぐために、柱の裏側に
あらかじめノコギリで割れ目を入れておくことです。